飲食店開業の前にお金は借りられる?

飲食店を開業する際、お金を借りることは非常に重要なことです。しかし、誰でも借りられるわけではありません。ここでは、「日本政策金融公庫」から「創業融資」を受けられない可能性がある要素についてご紹介します。

 

お金が足りなくなったときにお金は借りられない

「そもそも、開業のときにお金って借りないとダメなの?? 親族からの借金などでなんとかオープンできそうだけど…」という方もいると思います。

残念ながら、開業当初から順調に利益がでるお店の方が少数派です。開業当初は分からないことが多くあります。例えば人気のないメニューの食材の廃棄コストを減らすために提供を中止した。同じメニューでも安く調達できる食材に変えた。注文は多いが手間や食材費を考えると利益が出ないメニューの提供を中止した。繁盛しているが利益が出ないので値上げした。などなど、営業を続ける上で、どんどん最適化が進んでいき、利益が確保できるようになります。

他にも利益にならない時間帯の営業中止(日曜日の夜など)、過剰な従業員を減らす、デリバリーやお持ち帰りメニューに力を入れる、などもあります。常連さんが増えたり、話題になって集客が楽になるかもしれません。営業を続け、工夫を続けることで利益が増えていくことがほとんどです。

もし、黒字化する前に資金がショートしてしまったらどうなるでしょう? 毎月の家賃や光熱費、給料を払うための「現金」がなくなってしまう状況ですね。

実は「お金が足りなくなってからの借金は非常に難しい」のです。「え、借金ってお金が足りないからするもんでしょ?」と感じるかもしれません。 逆の立場で考えてみましょう。ご自身がお金を貸す側であったら、「お金持ちの相手」と「貧乏な相手」のどちらを選びますか。お金を貸す側は、金利を得るためにお金を貸しています。貸したお金が返ってこないと損をします。これはどんな金融機関でも同じです。個人の生活費の借金であれば誰でも借りられるかもしれませんが、事業の借金はそう簡単ではありません。

つまり、開業前であればお金が借りられたかもしれないが、開業して経営が悪化したあとだとお金が借りられない可能性があるということです。

 

日本政策金融公庫とは?

お金を借りる先は銀行、信用金庫など色々あります。が、基本的には「日本政策金融公庫」がもっともオススメです。日本政策公庫は日本政府が出資する金融機関で、普通の銀行などからの借入が難しい個人や中小企業のサポートが目的となっています。

「新創業融資制度」という制度があり、これは新しく事業をはじめる人に向けた制度で、もちろん飲食店をオープンさせる方も利用できます。この制度は担保や保証人が不要で、金利も低いことが特徴です。また、審査も2週間から3週間程度と短いことも特徴です。(申し込みから融資実行までは1か月から1か月半)

ちなみに札幌市には「札幌支店」と「札幌北支店」があり、開業場所によってどちらを管轄するか異なります。

札幌北支店 : 札幌市北区、東区 石狩市 江別市など

札幌支店 : 札幌市中央区、白石区、豊平区、南区、西区、厚別区、手稲区、清田区 千歳市 恵庭市 北広島市

詳しくは日本政策金融公庫のHPにて。

 

ブラックリストの載っているとダメ

ただ、誰でも借りられるわけではありません。ざっくり説明すると「ブラックリストに載っている」と要注意です。

具体的には

・すでに借金がたくさんある

・過去に破産したことがある(債務整理なども)

・クレジットカードの引き落としできなかったことがある

・税金などを滞納したことがある

・光熱費や家賃、携帯電話代金が払えなかったことがある

などです。簡単に言えば、払うべきお金を払わなかった(払えなかった)ことがある、という場合です。ご自身の信用情報はCICという会社のサイトから調べることができます。費用は1千円で、インターネットから簡単に確認できます。

ちなみに、上記に該当すると絶対に借りられない、という話ではありません。あくまで、借りられない可能性がある、という意味です。

 

自己資金が必要

開業したいから全部借りよう!とはできません。最低でも1割は自分で用意する必要があります。ただ、1割は目安で、さまざまな要因により変動します。現実的には3割が必要と考えると無難です。多いに越したことはありません。また、自己資金は自分でコツコツ貯めたお金が1番ですが、配偶者が貯めたお金や親などから援助されたお金も含むことができます。

注意事項

融資申し込みの前に使ったお金は「融資の対象外になる」可能性があります。基本的にはこれから使うお金を借りるので。先走って自己資金をすべて使ってしまった、ということがないようにしましょう。

 

経験も大事

融資の審査は経験も重要となります。飲食店を開業するのであれば、同じ業種(居酒屋なら居酒屋、ラーメン屋ならラーメン屋)で1年以上の経験があると良いでしょう。未経験だと借りられない、というわけではありませんが、飲食店は求人も多く、経験がない方がかなりレアだと思います。

サラリーマンや専業主婦から一念発起して飲食店を開業したい、という場合でも、1年くらいアルバイトができない理由はないと思います。

 

スタートは意外と小規模

逆に言えば、信用情報に問題がなく、十分な自己資金があり、飲食店で働いた経験があり、開業の熱意があれば創業融資が受け取れるということです。

では、具体的にいくら借りられるの?と考えると思います。そこで、日本政策金融公庫が公表しているデータを簡単にご紹介します。(2020年度新規開業実態調査 概要 から抜粋)

調査対象 : 開業して1年以内の法人、個人

経営形態 : 個人62% 法人38%

開業時の従業員数(最多) : 1人 38.4% 平均は3.2人

開業時の平均年齢 : 43.7歳

勤務キャリア(その業務で働いた経験がある) : 97.5%

開業動機(最多) : 自由に仕事がしたかった 56.5%

開業費用 : 500万円未満 43.7% 500万円から1千万円 27.3%

となっています。もちろん、このデータは美容室やマッサージ店、学習塾なども含まれているので、飲食店だけの話ではありません。

ただどうでしょう。意外と小規模のスタートなんだな、と感じませんか?

飲食店でも、最初から100席あるような大型店を開業させよう、という方はレアです。カフェでもラーメン屋でも居酒屋でも焼肉店でもスナックでも、最初は2人から4人で営業できるようなお店からスタートすることが多いです。また、年齢も若い方ばかりではありません。最初から法人にする方が少ないです。

飲食店の開業というと、たくさんお金がかかる&高い志が必要、というようなイメージもありますが、実際には「自由に仕事がしたかった」くらいの理由で、小さなお店を持つことの方が多いようです。

飲食店を開業することも、お金を借りることも、意外とそう難しくはないと思います。

 

事業計画書(創業計画書)がとっても大事

では具体的に、飲食店を開業するためにお金を借りよう!そのためにはどこに相談すれば…?を考えましょう。ただ、相談の前に、どこまで具体的にお金のことが整理されているかが重要となります。「すすきのに横浜家系ラーメンのお店をオープンさせたい!」というのは分かります。ただ具体的に

・テナント料、光熱費、従業員の給料、リース費用は毎月、いくらくらいなのか

・想定される1週間の客数、客単価、原価、利益はどのくらいか

・開業までの内装費、必要な機材や調達費はどのくらいか

・メニュー、調理時間、席数、必要な従業員数、調達先

くらいはイメージしておく必要があります。実際にテナントが決まっている必要まではありませんが、テナントが見つかってからオープン日までの期間(融資や内装工事の期間、保健所の検査、求人、看板やメニューのデザインや発注など)は知っておく必要があります。

こうした内容をまとめ、融資の審査などで必要なるのが「事業計画書」です。なんだか面倒くさそうですよね…。

ただ、こうしたことをゼロから調べたり考える必要はありません。

理由は簡単です。飲食店はとてもメジャーな業種なので、情報がたくさんあります。本を1冊買えばだいたいの流れは分かります。札幌市ですでに開業されている飲食店に相談すれば、具体的な数字も分かります。その他、テナントを仲介している不動産業者さんや創業融資に詳しい士業、飲食店営業許可業務を扱っている行政書士さんなどに相談すれば、事業計画書のサンプルは手に入ります。

基本的にはそうした事業計画書を自分の内容に少し修正するだけで用意できます。経営が未経験の人が一生懸命に考えるより、実際に飲食店を経営している人に聞いた方が圧倒的に簡単で、信頼できる数字になります。

全般的に言えることですが、融資の種類や事業計画書の書き方まですべて理解しようとすると、途方もない時間と労力がかかります。飲食店開業のコンサルタントにでもならない限り、そこまでする必要はありません。

ご自身が、今回限り、開業資金&運転資金が用意できればいいのです。

本気で飲食店を開業しようとお考えの方は、開業の専門家にご相談されるのが一番だと思います。