当事務所では「賃貸オーナー向け:高齢入居者の退去サポートサービス」をはじめました。
このサービスの目的は「ひとり暮らしの高齢者に何かあっても、賃貸物件の価値を損ねることのないよう、安心して賃貸オーナーが高齢者に入居させられること」です。
国土交通省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」をご存知でしょうか?
現在、ひとり暮らしの高齢者が賃貸物件に入居できない(孤独死のリスクから賃貸オーナーに入居を断られてしまう)ケースが多いことが問題となっています。
こうした中、ひとり暮らしの高齢者が賃貸物件に入居しやすくする(賃貸オーナーが安心で入居させられる)ために、国土交通省と法務省において、「入居者さんが亡くなった場合に備えて、事前に第三者と入居者さんが”死後事務委任契約”という契約をしておきましょう!」という方針を示しました。
正確には、以下の通りです。
単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、今般、国土交通省及び法務省において、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。
引用元:国土交通省ホームページ
どんな内容なの?
国土交通省HPの「残置物の処理等に関する契約の活用手引き」によれば、以下のようなことが書いてあります。
・賃借人(入居者)が死亡したとき、賃貸契約が解除できる権限(代理権)を受任者に与える
・入居者が死亡したときに、家財道具などを処分、廃棄、指定の場所に送付などを行う
自力救済禁止の原則
どうしてこうした契約が必要なのでしょうか?
「入居者が緊急入院してしまい、連絡が取れなくなってしまったため、管理会社が家財の処分と鍵の交換をしたら、逆に入居者から大家と管理会社が訴えられてしまった」という話を聞いたことがあると思います。
これは自力救済禁止の原則といい、賃貸オーナー(管理会社)であっても、裁判所の手続きを通さずに賃貸契約の解除や家財の処分は自由にできないとされています。しかし、裁判所で賃貸物件の明け渡し請求を行うためには時間と労力、費用がかかってしまいます。
こうした背景から「高齢者には入居してほしくない…」となっている現状があります。
一般的な死後事務委任契約とは?
一般的な死後事務委任契約というのは、以下のようなことをします。
・遺族などへの連絡
遺族がいない場合の葬儀関係の対応
・役所などへの手続き
国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療の資格喪失届の届け出
年金事務所への連絡(年金受給の停止など)
運転免許証の返還
・各種解約
電気、ガス、水道、電話、クレジットカードなどの解約
病院や施設への清算、解約
・家財道具の処分
など…。
非常に大変ですよね。死後事務委任サービスは司法書士や行政書士の他にも、葬儀会社や介護関係の法人など、さまざまな団体が行っています。そして合計で数十万円から100万円以上もする契約もあります。そしてトラブルも多く発生しており、総務省が注意を促しています。
費用が高額&トラブルが多い、という問題があり、あまり普及していません。
死亡する前はどうなるの?
賃貸オーナーの立場で考えると、「死亡したときのことは分かったけれど、緊急入院したり、老人施設に入った場合はどうなるの?」という疑問がでてくると思います。
この点が重要なポイントになります。死後事務委任は、対象者が死亡したあとからの話です。生きていても意識や判断能力がない場合、法定後見人が裁判所で選ばれます。
では、意識はあるけれど、これから賃貸物件を出て、施設や病院に移ることになった、という場合にはどうなるでしょうか??
具体的には、誰が家財道具の処分や移動をして、賃貸の電気、ガス、水道、電話、インターネット、NHK、新聞の解約をするのでしょうか?
当サービスは、賃貸契約に限定した死後事務委任契約 + 退去時の対応契約
こうした現状を解決するために、当事務所では「高齢のひとり暮らしの方のための、住居の賃貸契約に限定した死後事務委任&退去サポートサービス」を開始しました!
具体的には、ひとり暮らしの高齢者が…
倒れて施設や病院に転居するとき または 死亡したときに 委託者として
1,すぐに管理会社が立ち合いのもとで「異臭のするものの処分」「火災が起こりそうな状態ではないか、電気がついていないか、水道が出しっぱなしではないか、ペットがいないか、などの確認」を行います。
2,入居者本人と話し合い、「すぐに退去する」「退去しない」「とりあえず様子をみる」などの方向性を確認し、賃貸オーナーに伝えます。
3,退去する場合には、「賃貸契約の解除」「家財道具の処分や移動」「賃貸の電気、ガス、水道、電話、インターネット、NHK、新聞の解約」「郵便の転送」「(死亡したときは)親族への連絡」「家賃の滞納がある場合の対応」など、次の入居者を募集するために必要なことのみ行います。
このサービスの目的は「ひとり暮らしの高齢者に何かあっても、賃貸物件の価値を損ねることのないよう、安心して賃貸オーナーが高齢者に入居させられること」です。
将来的には、「家賃保証サービス」と同じように、入居する条件として、当たり前のように普及していることを願っています。
賃貸オーナーだから、できません
死後事務委任は、原則的に賃貸オーナーと契約することはできません。貸す側と借りる側の利益は反対(利益相反)になることが多いためです。同様に、その物件の管理会社も不適切でしょう。(関係のない管理会社であればOK)
任意後見制度との違いは?
任意後見制度とは「ひとりで決められるうちに、認知症や障害の場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度」です。
引用元:厚生労働省ホームページ
通常の任意後見人は、対象者が認知症になってしまった場合など「から」、財産(預金)の管理、病院への支払いなどを行います。しかし、任意後見契約は「他人に自分の財産を使い込まれそう…」という不安から望まない方が多くいます。また、任意後見人の契約は公証役場に行く必要があるなど、費用や労力でのハードルが高いです。
それに対し、本サービスは「施設などに転居するときの賃貸契約の解除」「引っ越しの手続きの代行」「家財道具の移動や処分」などに限定しているため、費用も安く、高齢の方でも安心してご契約いただけると思います。
Q&A
長くなってしまったので、ここからは簡単に説明や紹介をします。
家賃保証サービスの事務委託版です
家賃保証サービスは入居者と保証会社が契約し、オーナーに対して保証会社が家賃の支払いを保証サービスです。本サービスは「行政書士事務所が入居者と直接、契約を交わし、もしものときの対応を委任するもの」です。
見守りサービスとは違います
高齢者の見守りサービスは「孤独死を防ぐこと」を目的としていますが、本サービスは「孤独死があったとき(または高齢者施設や病院に入居し、賃貸物件から退去するとき)に行政書士事務所が様々な対応を行うこと」を目的としています。
孤独死保険とも違います
孤独死保険というサービスは、入居者が孤独死した際、その対処にかかった費用をあとからオーナーに支払うものです。本サービスはお金の保証ではなく、入居者の行動を代行するものです。
こんなことでお困りではありませんか?
・ひとり暮らしの入居者が倒れて、その後の対応で苦労した
・管理会社で出来ることに限界があった
・入居者の関係連絡先に連絡しても対応して貰えなかった
などの経験から、高齢のひとり暮らしの方に対し、入居を敬遠してしまうオーナーも多いようです。
利用の条件
繰り返しになりますが、本サービスは「行政書士事務所と入居者の直接契約」です。オーナー様との契約ではありません。家賃保証サービスと同じように、本サービスの利用を条件に賃貸契約を行える、ということになります。例えば、ひとり暮らしで60歳以上の場合には、本サービスの利用を条件とするなどです。
利用の注意点
あくまで、入居者の希望が優先されます。例えば入居者が緊急入院しても「いつか退院したらまた戻るので、賃貸契約は継続したい」ということであれば、賃貸契約の解除は行えません。
行政書士事務所だからできること
現在、行政書士会では行政書士が任意後見人として業務を行うことを積極的にサポートしています。
行政書士は、遺言書の作成、遺産分割協議書の作成、死後事務委任契約の作成など、相続に関係の深い専門家です。入居者の方にとっても、一般の方よりは信頼できることと思います。また、契約書の作成にも慣れています。
死後事務委任契約は、相続人(その方の親族)が推奨されていますが、あくまでその当事者同士の契約のため、相続人がなにもしなくても、オーナー側が行動を促すことは困難です。なにか罰則があるわけではありません。(実際に入居者の緊急連絡先の方に連絡しても、対応して貰えなかったという経験があると思います)
その点、個人と違って行政書士などの士業は「依頼を遂行する義務」があります。こうした点からも、賃貸オーナーの立場で考えると、死後事務委任契約は士業や法人である方が安心だと思います。
費用
費用については、現在、検討中です。