行政書士は契約書や借用書、示談書など、権利義務に関する書類を作成する専門家です。
行政書士は円満な状況でしか書類が作成できません
行政書士が契約書や示談書などの作成を受任する場合、相手方が書類作成に同意している必要があります。
行政書士は、これら契約書類の作成や、発生したトラブルについて協議が整っている場合には、「合意書」「示談書」等の作成も行います。
引用元:日本行政書士会連合会
相手が契約や示談に反対している場合、明らかに円満に書類作成ができない(紛争性がある)場合などでは、行政書士が書類を作成することができません。また、行政書士は依頼人に代わって、相手と交渉することもできません。
行政書士は円満な状況でしか、こうした書類が作成できません。
契約書を作る目的、ポイントは?
契約書、借用書、売買契約書、示談書、和解書、合意書、誓約書など、書類作成のポイントをまとめました。
目的とペナルティをしっかり理解する
まず大事なことは、その書類を作成する目的とその約束が破られたときに何ができるか、を理解することです。
例えば、借用書の場合、「貸したお金を返してもらう」ことが目的です。このとき、このまま「100万円貸したから、1年以内に返してね」と書くだけでは不十分です。
- 1年以内に返済しない場合の遅延損害金は?
- そもそも利息はあるの?それは利息制限法の範囲内?
- 本人が返済できない場合はどうなるの?連帯保証人は?
- 本人が引っ越したらどうなるの?何も連絡しなくていいの?
- 書類は郵送でいいの?本人がサインした証拠は?
など、考えるべきことがたくさんあります。
借用書を作成すること自体が目的ではなく、約束が破られたときに何ができるのかを決め、あとで有効(有用)になるように証拠を残すことが目的です。
個人がインターネット上のサンプルを参考に書類を作成する場合、ここを理解されていない方が多いと感じます。例えば、「口外しない」は口外したらどうなるのか?その人が口外した証拠はどうするのか?サインする前に口外した第三者が口外したらどうなるのか?などです。
権利義務について理解する
契約書は、個人間の場合、原則的に、その書類にサインする人にしか権利義務が関係しません。
例えば、異性関係の書類でよくある間違いとして「あなたの夫が私に連絡したら、彼が私に違約金を払う」という内容です。
この契約書にサインするのは「私」と「あなた」だけです。「あなたの夫」がなにをするかは、「あなた」がすべて責任を負うことはできませんよね。「あなたの夫」になにか義務なり約束をするのであれば、「私」と「あなたの夫」で別の契約書を作成するべきです。それか、三者間の契約書を作成します。
「あなたが私の夫に連絡したら、あなたが私に違約金を払う」ということは書けます。私とあなたの約束だからです。ややこしいですよね。
誰の権利義務なのか、誰がこの書類にサインするのかをしっかり理解しないと、意味のある書類は作成できません。(もちろん、例外もあるので、その書類によります)
法律を守る
これは当たり前に感じるかもしれませんが、意外と難しいです。例えば「利息として年50%を支払う」が利息制限法で、上限を超える部分は有効でないことがご存知かと思います。また、個人間の融資で年109.5%を超えてしまうと、出資法違反で刑罰の対象となってしまう可能性があります。例えば、5万円を貸すから、30日後に5千円を上乗せして返すね、という約束は利率が120%を超えてしまいます。
他にも、借りたお金を返せなかった場合は殴っていい、妻や彼女を差し出す、などももちろんダメです。
効力を理解する
「目的とペナルティを理解する」に似た内容ですが、契約書は万能ではありません。
契約書が有効であったとしても、相手がそれを守らない場合、裁判や調停などを利用して返済を求めることが一般的です。それには時間と費用がかかります。例えば、5万円の返済を求めるために弁護士さんに依頼するのは、費用対効果を考えると現実的ではありませんよね。自分で内容証明郵便を送るにもお金はかかります。
離婚のときの養育費の公正証書も同じです。公正証書に書いたこと自体は有効でも、次の日に父親(母親)が亡くなってしまえば、養育費は受け取れません。(養育費は生きている親が子供を扶養する義務に基づくため)
あいまいな表現や例外について理解する
金銭消費貸借契約書のように、お金の貸し借りだけの場合はシンプルかもしれません。しかし、ほとんどの契約書は、悩ましいことがたくさんあります。例えば
自動車を友人や知人と売買するときの売買契約書 … 買ったあとに不具合が生じたらどうなるでしょうか?その不具合は買う前からあったのか、買ったあとに生じたのか判断できるでしょうか?
口外禁止のある契約書 … その契約書にサインする前に口外していたらどうなるでしょうか?口外した人がさらに他の人に口外したらどうなるでしょうか?それは誰が調べるのでしょうか?警察官や医師、弁護士さんにも口外しても違反になるのでしょうか?
接触禁止の契約書 … コンビニでばったり会ったら違反になるのでしょうか?同じ会社に勤めていて、まったく接触しないことは可能でしょうか?
不倫などの契約書 … 不倫はどこからでしょうか?LINEだけならセーフなのであれば、好きなだけLINEしてもOKでしょうか?
などなど、現実的には難しいことがたくさんあります。正直、契約書を作ること自体は、簡単です。インターネットを真似して、誰でも作成できます。間違っていても、誰もチェックしません。(公正証書などを除く)そして、その約束が破られて、契約書が必要になったときに、「これじゃダメだね」とはじめて不備が理解できるのです。(不備があった場合の話です)
ただ、これは専門家に依頼したら、もしくは公正証書にしたら、100%大丈夫、不備はない、という意味ではありません。「口外しない」という項目自体は同じです。どこまで効力があるのか、気になるようであれば詳しく書くのか、などを相談できることが専門家に依頼するメリットです。契約書に書くべきことは、状況や心配していることによって大きく異なります。
繰り返しになりますが、契約書は作成することが目的ではありません。
特に制作などは、クオリティを表現することが非常に難しい
デザイン、システムやアプリ開発などに関わったことがある人なら理解できると思いますが、制作に関する契約書は、成果物の品質(クオリティ)が非常に難しいです。
「このネジと同じ物を100個作る」であれば、契約書としては分かりやすいでしょう。しかし、「いい感じのホームページを作る」というのは、いくらページ数や文字数を決め、過去の制作例を見て判断しても、なかなか難しいです。(ホームページ制作会社に依頼したけど後悔しています…という話を何度も聞いたことがあります)もちろん、しっかり要求仕様書を作成したり、依頼者側に知識とノウハウがあれば問題ないこともあるでしょう。しかし、その分野の素人が専門家に依頼する場合、とても難しいです。
- 写真館で撮影したけれど、あまりキレイじゃなかった(同じ値段で他の写真館の方が良かった)
- 人気の美容院でヘアカットしたけれど、自分の好みじゃなくて後悔している
- 皮膚科でレーザーのシミ取りをしたけれど、まったく効果がなかった
- 人気の保育園に子供を預けたが、保育士さんが怖すぎて転園した
などなど、日常生活でも「お金を払って利用したけれど、期待通りではなかった」ということはたくさんありますよね。そして、そのほとんどは、後悔する(悲しい気持ちになる)だけで、なにか賠償があるわけでもありません。
専門家に依頼するメリット
当事務所では、意味のある契約書を作成すること、その契約書の効力や限界を理解して頂くことは本当に難しいな…と常々感じています。
繰り返しになりますが、当事務所に書類作成を依頼したら、100%何の心配もいらない、ということではありません。将来、どういう可能性があるかは、本当に悩ましいです。ただ、いまある知識や経験をすべて使って、少しでも将来のトラブルや不利益を少なくするために書類を作成しています。
まとめ
行政書士札幌中央法務事務所では、行政書士として様々な契約書や書類を作成しています。書類作成のご相談であれば、お気軽にメールやLINEにてご相談くださいね。
- ビジネスでの業務委託契約書や委任状
- スポーツジムなどお客様に書いて貰う同意書
- 店舗や施設などの利用規約
- 守秘義務契約書や秘密保持契約書
- 損害賠償に関する合意書
- クレームやカスタマーハラスメントに関する合意書
など、様々な書類があります。費用は契約書の内容によります。
※ 紛争性のある場合などは作成できません。労働に関する契約書も社労士さんにご相談ください。その他、状況に応じて受任できないことがあります。予めご了承ください。